一般知識科目 政治・経済・社会1

民主政治とは

さて、行政書士試験対策のブログもいよいよ大詰め、カテゴリーとしては一般知識の政治・経済・社会の解説に入ります。行政書士試験では、14問中6問という一般知識科目での合格最低ラインが設定されています。いくら、今までの専門科目の成績がよくても、一般知識で6問正解ができないと合格できないので、侮れない科目です。
行政書士試験の過去問を見てみると、平成11年の試験委員制度導入前では、情報関連の出題はなく、政治用語、歴史、経済用語――などが出題の中心でした。平成12年~17年は、試験委員制度が導入され、情報関連の出題が導入され、増加の傾向です。平成18年以降の現行試験制度導入後では、情報関連が4~5問出題されています。学習範囲が広範になる政治経済分野と異なり、情報関連は、効率的に学習することで得点が見込みやすいので、ぜひ、押さえておきたいポイントです。

一般知識の1回目・2回目は政治分野のコアである民主政治について学びましょう。政治は、社会を構成する人々の集団内部の利害関係を調整し、社会の秩序を維持するための努力や工夫をすることと言えます。
それでは、①近代民主政治、②議院内閣制と大統領制、③政党政治のメリット・デメリット――と解説します。

Ⅰ.近代民主政治
近代民主政治は大きく、①国民みずから全体の意思決定に参加する直接民主制と、②選挙によって国民に選ばれた代表に政治的意思決定を委ねる間接民主制――に分けることができます。
近代民主政治の特徴は、①国民主権、②基本的人権の尊重、③代議制――です。今日の国家では間接民主制を原則とする国が一般的で、間接民主制の補完として直接民主制的な制度を採用している国もあります。直接民主制的な制度の要件として覚えなければならないのは、①レファレンダム(国民投票)、②イニシアチブ(国民発案)、③リコール(解職請求権)――です。
歴史的にみると、はイギリスの名誉革命における権利の章典、アメリカ独立宣言、フランス革命――などを通じて、近代民主政治体制は成立しました。
17~18世紀の市民革命期の代表的な政治思想に社会契約説があります。社会契約説は、一切の社会的秩序のない自然状態を想定し、その中で個人が自然権を確保するために相互に社会契約を結び、その結果、国家が成立する――という説です。社会契約説を唱える代表的な思想家にホッブス、ロック、ルソー、モンテスキュー――が挙げられますので、下表を使って必ず覚えてください。

Ⅱ.議院内閣制と大統領制
議院内閣制は、内閣(行政府)が議会(立法府)の信任の上に成立する政治制度です。通常、議会の第一院における多数派から首相が選出され、首相が組閣し、閣僚は主に国会議員の中から選出され、内閣は議会に対して連帯して責任を負います。
立法府と行政府は協力関係にあり、それが維持されなくなった場合のための手段として、①不信任制度、②内閣総辞職、③議会の解散制度――を備えるのが通常です。
一方、大統領制とは、行政府の長である大統領に非常に強い権限が与えられている政治制度のことです。大統領は、議会とは無関係に選出され、議会に対して責任は負いません。通常、立法府と行政府の役割が厳格に分離され両者の権能が明確化されるなど、三権の間に厳格な権力分立が保たれています。
下の表は、イギリスの議院内閣制とアメリカの大統領制を比較したものです。それぞれを比較しながら議院内閣制と大統領制の違いをしっかり確認しましょう。

なお、その他の主要各国の政治制度は次のとおりです。
ドイツ:連邦議会議員と州議会選出議員からなる連邦会議によって選出された、任期5年の大統領が存在しますが、象徴的な存在にすぎず、広範な権限を持つ連邦政府と連邦宰相による議院内閣制をとっています。
フランス:大統領は、国民の直接選挙(2回投票制による決選投票あり)によって選出され、任期5年で3選は禁止されています。大統領は、首相や閣僚の任免権、閣僚の主宰、条約の批准権や非常事態における措置権、議会解散権などの強力な権限を有しています。
ロシア:国家元首であり、任期6年で国民の直接選挙により選出される大統領による政治体制をとっています。大統領は、首相任免権、下院の解散権、非常大権をもち、軍の最高司令官を兼ねるなどの強大な権力を有しています。
韓国:国民の直接選挙により選出される大統領制(任期5年)を採っています。大統領は法案および予算案の提出権を有し、議会は一院制で解散制度はありません。
中国:民主集中制を統一基本原理としています。一院制の全国人民代表大会が国家の最高権力機関であり、すべての権力が集中しています。国家主席が、対外的に国家を代表し国家元首的な存在です。

Ⅲ.政党政治のメリット・デメリット
政党とは、特定の主義・政治思想で一致した人々が、その主義・思想に基づき結成し、政権の獲得・維持を目指す政治集団(結社)です。政党が議会を通じて政権を掌握して政治を運営することを政党政治と言います。
政党政治は、その政党間の関係により次の3つに分類されます。
①二大政党制:政権担当能力を有する同程度の勢力の2つの政党が、選挙の結果に応じて政権交代を繰り返す形態
②多党制:議会の過半数を得るに足らない程度の勢力を有する政党が複数存在する形態(連立政権を樹立する場合が多い)
③一党制:他の政党の存在を認めず、1つの政党のみで政治権力を握る形態
それぞれのメリット・デメリットは一覧にまとめました。

また、政党政治に強く影響を与える圧力団体の存在を解説します。圧力団体とは、政府・議会・政党に圧力をかけて政策決定に影響を与え、自団体の特殊利益の実現を図る集団のことで、政権獲得を目的としない点で政党とは異なります。この圧力団体は、政党や議会の機能を補うものとして、職業利益を代表する新たな団体として発生しました。
アメリカでは、圧力団体が代理人としてロビイストを雇って活動し、「圧力団体は上院・下院に次ぐ第三院」と呼ばれるほどです。ロビイストとは、圧力団体の利益を政治に反映させるために、政党・議員・官僚などに働きかけることを専門とする人々で、米国議会のロビーなどで議員と話し合うという慣行からできた語です。
一方、日本では、アメリカと異なり職業的ロビイストが未発達であることから、自民党政権下では、国会議員自身が特定分野の政策決定に強い影響力を持つ族議員として、行政に対するロビイスト的な役割を果たすことがありました。
そして、日本の圧力団体の特徴として、主に行政機構を活動の対象とすることが挙げられます。圧力団体が政治に与える影響は主に次の3点です。
①議会や行政機関の正常な運営の阻害
②政治権力と癒着し、政治腐敗を招く
③圧力団体を構成しにくい社会的弱者の利益が軽視される
なお、日本の圧力団体の具体例としては、日本経済団体連合会、日本労働組合総連合会、日本医師会などが挙げられます。

 

 

日本の政治制度

今回は、日本の中央政治と地方政治――について勉強しましょう。今まで憲法や行政法で触れた内容と重なる点もありますが、復習にもなりますし、全体像をつかむ上では大切な内容です。
本日のメニューは、①選挙制度と政党関連法、②行政国家化現象と行政改革、③地方分権――です。

Ⅰ.選挙制度と政党関連法
選挙制度を学ぶに当たって、まず、①大選挙区制、②小選挙区制――についてお話しします。①の大選挙区制とは、大きく分けた1つの選挙区から2人以上の代表者を選出する制度、②の小選挙区制とは、小さく分けた一つの選挙区から1人の代表者を選出する制度と覚えましょう。
そして、それぞれの制度には下表のようなメリット・デメリットがあります。

※ゲリマンダー:特定の政党や候補者に有利になるように、恣意的に選挙区を設定すること
大選挙区制や小選挙区制という選挙制度は、選挙人が立候補した人物に対して投票したのに対し、政党に投票する③比例代表制という選挙制度もあります。
③の比例代表制とは、各政党の得票数に応じて議席を配分する選挙方法です。死票が少なくなり、少数意見が尊重されて有権者の意思が忠実に反映されるというメリットがある一方、小党分立を招き政局が不安定になりやすいというデメリットがあります。
ここからは、日本の選挙制度の勉強です。日本の選挙制度は1950年制定の公職選挙法を核に運営されています。公職選挙法には、選挙が公正に適正に行われることを目的として、選挙制度、定数配分、選挙運営、選挙運動の規制――などが規定されています。幾たびもの改正が重ねられて今日に至っていますが、下表に改正の主な点をまとめました。

以上のような選挙制度の改正が行われた結果、我が国の現在の選挙制度はどうなっているのかというと、
まず、衆議院議員総選挙は、小選挙区比例代表並立制が採用されています。定数480のうち300議席は小選挙区制、残り180議席は全国11のブロックに分けて政党の得票率に応じて議席配分を行う比例代表制で決定されます。衆議院議員選挙の比例代表制は、政党名でしか投票できない拘束名簿式によります。
なお、戦後の日本の衆議院の選挙制度は、1994年の改正まで、一度の例外を除いて、中選挙区制と呼ばれる正式名称は大選挙区単記投票制度が採用されていました。
次に参議院議員通常選挙では、選挙区と比例区が併存します。定数242の内訳は、選挙区選出議員が146議席、比例代表選出議員が96議席です。選挙区は1名の議員が選出される場合と、2名以上の議員が選出される場合があることから、単に選挙区と名付けられています。また、比例区は全国を一区とする形式で、非拘束名簿式で実施されます。
衆議院議員選挙で作用されている拘束名簿式とは、選挙人が政党名を書いて投票し、各政党から得票数に応じて議席が各政党に配分され、各政党の候補者名簿の上位から当選者が決定される方式です。
一方、参議院議員選挙で採用されている非拘束名簿式とは、各政党の候補者名簿に順位を付けず、個人名でも政党名でも投票できる方式です。政党名の得票とその政党の候補者の個人名の得票の合計が政党の総得票数となり、個人名による得票数の多い順に当選者が決定されます。
次に政党等を規制する政党関連法についてお話しします。
まず、政治資金規正法です。政治資金規正法は、政治団体の届出、政治資金の収支の公開、政治資金の授受の規正などの措置により、政治活動の公明と公正を確保し民主政治の健全な発達に寄与することを目的とする法律です。
1948年制定されてからの改正点は下表にまとめますが、2007年の一部改正で、①政治資金収支報告書を提出する際に登録政治資金監査人による監査が義務付けられたこと、②国会議員関係政治団体に、2009年1月1日から1円以上のすべての支出について領収書の保存が義務付けられたこと――の2点がここでのポイントです。

※1資金管理団体:候補者自らが代表者を務める政治団体の内から、1つの政治団体をその者のために政治資金の拠出を受けるべき政治団体として指定したものを言います。
※2政治資金団体:政党のために資金を援助することを目的とし、政党が指定したものを言います。
これに関連して政党助成法についてお話しすると、政党助成法は、国が政党に対し活動費用の一部を政党交付金として交付するための法律です。政党交付金は、所属議員数、得票数に応じて各政党へ分配されます。
政党交付金を受けるための要件は、①所属の国会議員を5人以上有すること、②直近の国政選挙で2%以上の得票率を獲得したこと――のいずれかをクリアすることです。
ところで、19世紀末以降の自由主義経済の発達に伴って、恐慌や失業問題が表面化し、社会内の不平等が進んできました。そこで国家は、不平等を是正するために国民生活に積極的に介入することになりました。その結果が、行政活動の量的増大や質的変化をもたらし、行政機能の役割が増大し、行政機関が実質的に意思決定を行うという、議会による政治のコントロールが低下する行政国家現象が生じました。
行政国家現象の特徴は3つです。
①政府提案立法の増大
②委任立法の増大
③政治の官僚政治化
①の政府提案立法とは、政府が法律案を作成して国会で制定させることで、官僚は法案の技術的な作成者として国会に対して強い影響力を持ち、事実上は、法案作成の推進力となっています。
②の委任立法とは、法律の委任に基づいて行政府等が法規を定めることで、行政機関が増大し、国会の制定する法律は行政の大綱を定めるだけで具体的な事柄は委任立法として行政府に任せる傾向が強まっています。
③の官僚政治化は、行政権の拡大により行政官僚の地位を高め、官僚が政治の実権を事実上握る官僚政治を生み、政治腐敗・天下り等の弊害をもたらす原因ともなっています。
そんな中、1980年代以降、世界の主要国に行政改革の流れが訪れました。行政改革の背景には、国家の財政難による行政サービスの低下を打開するために、新自由主義(新保守主義)の立場から、政府の経済活動の効率化と民間の経済活動の発展を中心とした改革が求められるようになったことがあります。
新自由主義とは、市場メカニズムを重視し、行政サービスの供給にも、市場メカニズムをできる限り導入すべきで、小さな政府が望ましいという考えです。また、経済活動に対する規制はできるだけ緩和・撤廃し、国営事業などの民営化や、さらに行政活動における企業経営手法の採用を採りいれています。
我が国における行政改革の例には、①内閣機能や行政組織等の再編・合理化、②公務員制度の改革、③行政の情報化、④行政手続の改善、⑤中央地方関係の見直し――などが挙げられます。
ここでの重要ポイントは、橋本内閣における中央省庁改革です。行政改革会議を設置して公務員制度改革の必要性を打ち出し、その後、中央省庁の統廃合を進める中央省庁改革基本法などが制定されました。
次に、具体的な行政改革の手法を8つ紹介します。
①新公共管理論(NPM)
②政策評価
③PFI(Private Finance Initiative)
④構造改革特別区域(特区)
⑤市場化テスト(官民競争入札制度)
⑥指定管理者
⑦モデル事業
⑧オンブズマン制度
①の新公共管理論(NPM)とは、行政活動に民間企業の管理手法を導入することによって効率化を図る新たな管理手法のことです。特徴は、徹底した市場競争原理の導入が挙げられ、3E(経済性=economy、効率性=efficiency、有効性=effectiveness)は重視され、我が国の行政改革に影響を与えた手法です。例えば、a行政活動に民間企業の管理手法を導入→民間化、外部委託化、b市場競争原理の導入、c政策立案と政策の実施の分離、d成果の事後評価――などが挙げられます。
②の政策評価とは、国の行政機関が政策の効果を測定・分析し、客観的判断を行い、政策の的確な企画立案を行ったり、実施に役立てる情報を提供することです。我が国では2001年から全政府的に導入され、製作評価法を制定、国民に説明する義務が明示されています。具体的には、総務省行政評価局は、評価専担組織の立場から、各府省の政策についての統一性や総合性を確保するための評価を行うとともに、各府省の政策評価の客観的で厳格な実施を担保するための評価を行っています。
③のPFIとは、公共施設等の建設、維持管理、運営等を民間の資金、経営能力、技術的能力を生かして行う新しい方法で、事業コストの削減、より質の高い公共サービスの提供を目指すものです。イギリスなどでは、公共施設等の整備、再開発等の分野で成果を収めています。
日本でも1999年からPFI推進法(民間資金などの活用による公共施設等の整備等の促進に関する法律)が施行され、2007年5月、日本初のPFI事業手法を活用して、山口県美弥市に刑務所が開設されています。これは、欧米の民営刑務所のように民間が全面的に施設を運営するのではなく、官と民が公権力の行使とサポート業務を分担する混合運営施設です。
④の構造改革特別区域とは、地方公共団体が地域の活性化を図るために自発的に設定する地域で、地域の特性に応じた特定事業を実施したり実施を促進するものです。規制緩和の一つとして、構造改善特別区域法に基づき実施されています。
対象となる分野は、地方公共団体の特定事業である研究開発、教育、農業――など多岐にわたります。特区を全国に拡大、存続、廃止等の判断は、構造改革特別区域推進本部(本部長は首相)が行います。日本初の特区は、2002年4月、沖縄の金融特区、情報特区です。
⑤の市場化テストとは、公共サービスについて官と民が対等な立場で競争入札に参加する制度のことで、2006年に競争の導入による公共サービスの改革に関する法律が成立し、この制度が導入されました。目的は公共サービスの質の維持向上と経費削減の推進です。官と民のみならず、民と民の競争入札も認められ、実施の過程での透明性・中立性・公正性を確保するため、内閣府に官民競争入札等監理委員会が設置されています。
⑥の指定管理者制度とは、地方公共団体の有する公の施設の管理・運営を、契約ではなく公法上の指定という行政処分により民間事業者一般に認容する制度です。
⑦のモデル事業とは、NPMの理念である「PDCA=Plan(計画)、Do(実行)、Check(点検)、Action(改善)」の考え方に基づき、定量的な成果目標を立てて、事後的に厳格な評価を行うとともに、事業の性格に応じた予算執行の弾力化を行い、事業効果を予算に反映させるものです。
⑧のオンブズマンとは、市民の苦情に基づいて行政を監視し、行政に対する市民の苦情等を処理し、必要に応じて是正勧告する行政監察官のことです。一般に人権擁護に加え、行政に対する苦情救済や行政改革などの機能を有しています。オンブズマン制度は、1809年にスウェーデンで初めて導入され、第二次世界大戦後に近隣の北欧諸国から英連邦諸国へと普及、ヨーロッパを中心に世界の30カ国以上で導入されています。
日本では、1990年に神奈川県川崎市で初めて導入されましたが、国の制度としては実現に至っていません。

Ⅲ.地方分権
我が国では、行政改革の一端として、住民に身近な行政の権限を中央政府からできる限り地方自治体に移し、地域の創意工夫による行政運営を推進できるよう、地方分権が推し進められています。ここで、取上げるのは①平成の大合併、②道州制、③地方分権改革推進法、④地域主権戦略会議、⑤住民投票――です。
まず最初に挙げなければならないのが、①の平成の大合併です。政府は、市町村合併特例法(市町村の合併の特例等に関する法律)を大幅に改正し、市町村の合併を容易にして、約3200ある市町村を2005年までに約1000にするよう市町村合併を推進しました。2011年11月現在の市町村数は1719です。
市町村合併のメリットは、a福祉サービスの安定的な提供・充実、b窓口サービスや公共施設の広範な利用が可能となること、c広域的な施設整備による一体的なまちづくり、d行政経費の節約による高水準の行政サービス――が挙げられ、デメリットとしては、a住民の声が届きにくくなる、b行政によるサービスの低下、c各地域の歴史や文化等の喪失、d財政状況の良し悪しで市町村間に格差ができること――が挙げられます。
②の道州制とは、複数の都道府県を統合した面積規模を持つ広域行政体をつくり、自立のための権限を与える制度のことです。道州制特区推進法(道州制特別区域における広域行政の推進に関する法律)が制定され、現行の都道府県制を前提にしつつ、道州制特別区域において特定広域団体で実施されることが適当と認められる施策に関する行政の推進を図っています。なお、現在特定広域団体となっているのは北海道のみです。
また、地方分権を推進するため、地方分権一括法が1999年に制定され、その後2006年12月には、③の地方分権改革推進法が成立しました。地方分権改革推進法の目的は、地方分権改革の基本理念や国と地方双方の責務、施策の基本的な事項を定め、必要な体制を整備することです。
同法に基づき、2007年4月から内閣府に設置された地方分権改革推進委員会において調査審議が行われ、内閣総理大臣に対して勧告等がなされ、2009年12月、政府は地方分権改革推進計画を策定しました。なお、2010年3月31日に地方分権改革推進法が失効したことで、地方分権改革推進委員会も活動を終了しています。
④の地域主権戦略会議は、地域主権改革に関する施策を検討・推進することを目的として、2009年11月に閣議決定に基づいて内閣府に設置された内閣総理大臣を議長とする会議です。
2010年6月22日に地域主権戦略大綱が閣議決定され、地域主権改革を総合的に推進するために必要な法制上の措置などを定めて、今後の改革の取り組み方針を明らかにしました。具体的には、a義務付け、枠付けの見直しと条例制定権の拡大、b基礎自治体への権限移譲、c国の出先機関の原則廃止、dひも付き補助金の一括交付金化、e地方税財源の充実確保――などが掲げられています。
また、2010年12月には、アクション・プランが閣議決定され、出先機関改革を円滑かつ速やかに実施するための仕組みとして推進委員会が設置されています。
⑤の住民投票とは、一定の資格を持つ地域住民すべての投票により意思決定を行う制度で、a憲法95条に規定されている住民投票、b法律に基づく住民投票、c条例に基づく住民投票――などがあります。
aの憲法95条に規定されている住民投票制度とは、国会が特定の自治体だけに適用される地方特別法を制定する場合で、その自治体の住民投票によって過半数の同意が必要という制度です。例えば、広島平和記念都市建設法が戦後初期に実施されています。
bの法律に基づく住民投票制度とは、2002年の市町村合併特例法の一部改正によって、市町村合併に関する住民投票が制度化されたものです。
cの条例に基づく住民投票制度とは、課題ごとに住民投票条例等を制定する場合や、恒常的な条例を制定する場合などがあります。例として、1996年の新潟県巻町における原子力発電所建設をめぐる住民投票が挙げられます。

 

 

国際政治

政治の分野の最後は、国際政治について、①国際連合、②核軍縮など、③人権問題――と見ていきます。

Ⅰ.国際連合
国際連合は、1945年4月、サンフランシスコ会議で国連憲章が採択され、同年10月に加盟国51カ国で誕生したアメリカ合衆国ニューヨークに本部を置く国際機関です。
国際連合の設立の目的は、①政界の平和および安全を維持推進すること、②経済的・社会的・文化的・人道的な国際協力を推進すること――です。1920年に発足した国際連盟がすべての大国を包含することができず、全会一致の原則の採用による実効性ある決議の欠落などが原因で、結果的に第二次世界大戦の勃発を止めることができなかったことの反省から、大国を中心とするすべての国々の協力と協調を前提として形成されています。
日本は、1956年10月の日ソ国交回復共同宣言を経て、同年12月、国際連合に加盟しました。
次に、国際連盟と国際連合を併記しますので、その違いに注意しながら確認しましょう。

次は、国際連合の機能と組織を詳しく見ていくことにします。国際連合の主要機関は、①総会、②安全保障理事会、③経済社会理事会、④信託統治理事会、⑤事務局、⑥国際司法裁判所(ICJ)――です。主要機関の下に各種委員会等の補助機関が設置されています。その他の常設的補助機関として、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)、国連児童基金(UNICEF)、国連貿易開発会議(UNCTAD)などがあります。さらに国連システム内に国連本体とは別の国際機関である専門機関があります。
主要機関である①総会は、全加盟国で構成され国連の中心です。通常総会が毎年9月に開催されるほか、安全保障事理国の要請または加盟国の過半数の要請に応じて特別総会が開催されることもあります。投票権は1国1票で、重要事項は3分の2以上、その他は過半数で決議されます。なお、重要事項とは、平和と安全に関する勧告、新加盟国の承認・除名、予算および理事国の選挙――などです。
②の安全保障理事会は、国際平和と安全の維持に主要な責任を負い、安全保障問題に関して総会に優越した権限を持ちます。つまり、全加盟国は安全保障理事国の決定を受入れ、実行しなければなりません。安全保障理事会の主な機能および権限は、a紛争の解決条件の勧告、b侵略防止のための経済制裁の要請、c侵略に対する軍事行動、d新加盟国の承認の勧告――など多岐にわたります。
安全保障理事会は、拒否権を有するアメリカ・イギリス・フランス・ソ連・中国の5常任理事国と、任期2年の非常任理事国(総会選出の10カ国)で構成されています。議事の手続事項は9カ国の賛成、実質事項は5常任理事国のすべてを含む9カ国の賛成で決議されます。なお、実質事項の表決の際の常任理事国の反対投票を拒否権行使と言い、これにより議案は否決されます。
③の経済社会理事会は、経済的および社会的国際協力に関して、国連の任務を遂行する機関で、国連総会で選出された54カ国で構成されています。
④の事務局は、国連の各機関の運営に関する事務を担当する機関です。その長である事務総長は、任期5年で、国連総会の招集、各機関の運営その他の政治的権能を有しています。
⑤の専門機関は、特定分野で活動する国連の外に置かれた独立の機関です。代表的のものとして、a国際通貨基金(IMF→国際通貨に関する協議、為替の安定等を行う)、b国際復興開発銀行(IBRD→開発途上国の経済構造改革のための融資を主要な業務とする)、c国際労働機関(ILO→労働条件改善を国際的に実現することを目的とする)、d世界保健機関(WHO→世界各国民の健康の保持・向上を目的とする)、e国連教育科学文化機関(UNESCO→教育・科学・文化面を通じた国際間協力を促進し、平和貢献を図る)――などがあります。
⑥の国際司法裁判所は、国家間の紛争の司法的解決を行う機関で、本部がオランダのハーグに置かれ、国際労働機関(ILO)とともに前身の国際連盟時代から存在していた機関です。紛争当事国は本裁判所に事件を付託しますが、原則として当事国の双方が付託に同意しないと裁判を行うことはできません。国際司法裁判所の司法的解決には拘束力があり、相手国の不履行に対して安全保障理事会に訴え、実効を促す勧告・措置を求めることができます。なお、国連に未加盟の国も当事国になることが認められていますし、総会からの諮問に応じて、法律的に勧告的意見を示すこともできます。
次に具体的な国連などを中心とする諸活動について、①PKO(Peace Keeping Operation=国連平和維持活動)、②NGO(非政府組織)、③NPO(民間非営利組織)――と見ていくことにします。
①のPKOは、地域紛争の停戦維持や紛争拡大の防止、公正な選挙の確保のために行われる国連の活動です。国連憲章には規定がなく、国連安全保障理事会の決議によって行われます。代表的な活動は、1992年の国連カンボジア暫定統治機構(UNTAC)で、停戦・武装解除の監視に加え、治安の維持・選挙の実施・行政の監視等など、広範囲な任務を担っていました。
また、紛争地域における交戦部隊引き離しや治安維持を目的に、交渉・説得・監視・調査権限を有する国連平和維持軍(PKF)の派遣を行うこともあります。このほか、停戦実現後に停戦違反の有無を調査・監視する停戦監視団や、選挙の不正や妨害を監視する選挙監視団の派遣も行います。
これに対して、我が国でも1992年、PKO協力法が制定され、下記の参加5原則を守ったうえでのPKO活動を行っています。
a停戦合意の存在
b受け入れ国の同意
c中立的な立場での活動
d①~③の要件が満たされていない場合の活動停止
e自衛のための必要最小限の武器使用
次に、これまでのPKO協力法の改正点を下表で確認してください。

②のNGOとは、国連のような政府間国際組織ではなく、国家とは直接関係ない民間交流の非政府組織のことです。NGOは、軍縮問題・人権問題・環境問題など、主に国家利益を超えた人類に共通した分野で活躍し、人権保障のための国際世論の啓発を行います。NGOの例としては、アムネスティー・インターナショナル(国際法に則って、死刑の廃止、人権擁護、難民救済など良心の囚人を救済、支援する活動を行っている)、国際赤十字、国境なき医師団――などが挙げられます。
③のNPOとは、営利を目的としない民間団体の総称です。日本では、1998年にNPO法(特定非営利活動促進法)が成立し、NPOは公益法人よりも穏やかな条件で法人格を所得できます。また、NPO活動の一層の発展を図る目的で2002年に改正が行われ、NPO活動の種類が12分野から17分野に増えるとともに設立認証の申請手続が簡素化、寄付金控除等の課税の特例が認められました。

Ⅱ.核軍縮など
第二次世界大戦後に各国で行われた核実験は地球破壊の不安を広げたため、核兵器の撤廃・軍縮を求める機運が高まりました。1992年のキューバ危機の後、米ソ間にホットライン(緊急通信線)が設置されたほか、1963年に米ソ主導の、部分的核実験禁止条約(PTBT)が締結された以降、核軍縮の方向に進んでいたものの、近年では、イランや北朝鮮の核問題等、核軍縮を揺るがす問題も発生しています。
第二次成果大戦後の核軍縮等の流れを一覧にまとめましたので、確認してください。

Ⅲ.人権問題
第二次世界大戦時におけるファシズムによる人権抑制や戦争の悲惨さを教訓に、戦後、国際連合を中心に国際平和の維持と国際協力による人権の尊重への取り組みが続けられています。
国際連合は、社会的弱者やマイノリティー(社会的少数者)の人権擁護・拡充に先導的な役割を果たしていて、国際的な活動として人権条約の締結を推進しています。おもな人権条約を下表にまとめましたので、参考にしてください。

 

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